2005-01-01から1年間の記事一覧

パトリシア

この世に生を受けてから十数年、トラックをはねたこともトラックにはねられたこともなかったのだけれど、今僕は空中を舞っていて、なぜ空中を舞っているのかというと、それは別に背中から羽が生えたからではなく、もちろん尻から羽が生えたわけでもなく、ト…

ペーパームーンにこしかけて

びゅうと風が、暖かさの残る空気をひとまとめにしてどこかへ連れ去ってしまい、こうして夜がやってくる。僕は首をあげ、空を見た。星が弱くまたたいている。オリオン座はいつでもオリオン座だ。僕はオリオン座を見ると反射的に数学の図形問題を連想する。だ…

ウィ・ハブ・ア・テーマソング

夢とか希望とか輝く明日とか、考えただけで反射的にすかしっ屁をかまして反射的にセルフにぎりっ屁をやらかして反射的に気を失ってしまうほど嫌いな言葉であるが、僕はここのところ毎日、反射的に気を失っている。朝起きて、枕カバーにべっとりと付着したキ…

バック・シート・ドッグ

何度チラ見てもバックミラーには後部座席に座っている犬。「おはようございます」「おはようございます」「奥様のワンちゃん、可愛らしくいらっしゃってホホホホ」「いえいえ奥様のワンちゃんこそ賢そうな顔面でオホホホホ」などと井戸端会議で話のタネにな…

ビューティフル・モーニング・ウィズ・ユー

ヒトが眠りにつく瞬間ってのはいつなのかしら、ふと思った僕は、ベッドでうつぶせになり(寝るときの作法として当然下半身は露出してある)自分が眠りにつく瞬間を心待ちにしていたのだけど、いつの間にか3時間ものタイムが消費されていて「むう」と思った。…

ハート・イズ・ゼア

この世に生を受けてから十数年、ナンパというのをしたこともされたこともない。もちろん、ナンパがどういう行為であるか、そのくらいは知っている。上半身を心もち左側に傾けつつ右手を定年間近のクレーン車のような角度で差し出しながら「ヘイヘーイ彼女、…

タイニー・ボート

いつか必ず僕も経験できるはずだ、そう思い始めてはや十年、未だにデートをしたことがない。そもそもデートとはなんぞや。おぼろげにイメージはできるけれども、やはり未体験ゾーン、はっきりとしたデートの形はわからない。燕雀いずくんぞデートの志を知ら…

カラフル・パンプキン・フィールズ

かぼちゃが嫌いである。どのくらい嫌いかというと、それはもう筆舌に尽くしがたいレベルの嫌いっぷりで、理由なんてものはなく、ただ、そこにかぼちゃがあるから嫌う。食卓にかぼちゃの煮つけが出れば失神し、スーパーの野菜売り場に近づけば失神し、「シン…

確かめに行こう

二日続けてインスタント・ラーメンの粉末スープを床にぶちまけてしまった僕が真っ先に思い浮かべたのはニュートンの性器だった。それはふやけていた。まるで今、僕の目の前で、粉末スープの混入を心待ちにしている片手鍋の中の麺たちのように、柔らかく、そ…